今回はサターンリターンについて書いていきます。
記事の後半に、2019年から2025年までの土星の運行星座・度数と誕生年の一覧も掲載します。
サターンリターン。
成長のための土星のサイクル。
サターンリターンとは、トランジットのホロスコープ上で土星が誕生時の位置に回帰することを言います。
心理占星術の分野で、リズ・グリーンさんなどが盛んに理論を展開していて、土星が誕生時の位置に戻ってくるおおむね29歳頃から人は自分自身についての問いを開始すると、論じておられます。
人の人生の過程において、何か重要な出来事が起きたり、自ら何かを選択するような節目の時期、ということだと思います。
吉凶占いで言うところの凶星である『土星』が絡んでいるので、何か悪いことがあるのではないかと思われたりするのかもしれませんが、『土星』自体にそのような力や効果があるわけではなく、あくまでも人が判断しているものです。
天空のカレンダー的には、土星の誕生時回帰、それは、人の成長過程において社会の中核を担う時期の入口と出口の移行期を示している、時計の針の位置に過ぎません。
天体と人生の年齢期
パーソナル占星術では、天体には年齢域という、地球以外の天体をそれぞれの年齢域に当てはめて、象徴しているとする見方があります。
例えば、月は0~7才頃、水星は7~15才頃、金星は15~25才頃、太陽が25~35才頃、火星は35~45才頃、木星は45~55才頃、土星は55~70才頃、天王星は70~85才頃、海王星が85才以上、冥王星が死期とされています。
天空のカレンダーとして見る時には、天体の公転周期などのことも考えて、上記の年齢からかなりずれて捉えています。
年齢期それ自体は何かを占うというよりも、単に時期を示しているまさにカレンダーや時計の針、という使い方をしています。
太陽は自分自身なので、地上(地球)に太陽をもって人は生まれます。
地球より太陽に近い天体と地球の衛星、月、水星、金星までが大体6~7才頃。
火星が7、8才~12才頃、木星が12才~30才頃。
土星が29才~58、59才頃、天王星が60才~84才頃、海王星はそれ以降、冥王星は死期と捉えます。
以下詳細を説明していきます。
天空のカレンダーとして見る年齢期
・太陽、月、水星、金星
前述したように、人は太陽をもって生まれ、月=母によって育まれます。水星によって世界を認知し、金星によって愛情と周囲の世界との内的なつながりを作り、精神的な基礎を構築します。
月、水星、金星は、太陽ととても近しい天体ですよね。これらの天体は、太陽と付かず離れず一緒になって、その後の基本となる幼少期の意識を形成する役割を果たすのだと思います。
・火星期
そして、火星によって活動領域を広げ、外的な領域との接点である身体と精神を育成します。火星の年齢期には初等教育というか、古代の農業カレンダー的には遊びを通じてコミュニティに馴染み、訓練を受け始めている時期だと思います。この時期自体は、おおむね火星の公転周期3回分。
火星が6回目に誕生時の位置に戻ってくる頃、木星が誕生時の位置に回帰して、木星期となります。
・木星期
古代の社会では12才くらいになれば、立派なコミュニティの一員として扱われる時期と言えるでしょう。現代社会でも、中学生になればもう児童とは言い難い年齢ですよね。そこから木星の性質である拡張と恩恵の時期を通じて成人へと向かい、より大きな社会の中で自分を生かすための立ち位置を見つけていくことになります。
・土星期
社会にも馴染み、そろそろ家族もできつつある頃、土星の誕生時回帰からは土星の時期となり、一人前、まさに地球を動かす社会の中核を担う人材としての時期、となります。土星期と言っても、何か良くない事が起きるとか困難の多い時期ということはありません。
現代社会において30代から60代にかけての約30年間は、まさにメインの社会構成員ですよね。人口動態で見ても中間層の年齢層でもありますし、働き盛りの時期で、親元から完全に離れたり、後継者としての「世帯」の筆頭者となり、社会を支える主役の年代となります。
それだけに責任も大きく、それまでのようにどこか浮ついたおぼつかない意識・姿勢のままでは不適切とされ、また自分でもどこか居心地が悪く感じる、そんな場面も増えてくる時間になったということです。
今までのようなわけにはいかない。土星期にさしかかった時期の戸惑いと混乱、これがサターンリターンが一つのハードルと捉えられる点となっているようにも考えられます。
ですが同時に、成長に合わせてそれまで履いていた靴が小さくなり痛みを感じて、新しい靴を求めている時期でもあるのです。
ここから初めて自分の足に合った靴を履き、自分なりの本当の人生を歩き出すと考えてもいいような気がします。
一度目のサターンリターンは、物理的な領域で”自分を生きる”時間帯への入り口でもあるのです。
公転周期と平均余命
土星期の終了と天王星の時期を見る前に、公転周期と平均余命(寿命)について考えてみたいと思います。
例えば、古代の人々には、木星の公転周期12年は、とても大きな節目になったことと考えられます。
一周回って成人し、2周回る頃には家族も増え、おそらく3周目を迎える頃にはそろそろ寿命を迎えるという時代もあったことでしょう。
静岡県立大学の鬼頭宏学長によると、日本においても縄文時代の女性の平均余命はおおむね14才、江戸時代でも40才前後とされています。
(出典:博報堂スペシャルコラム 連載:FOR2035 来るソロ社会の展望を語る[ソロ男プロジェクト]
歴史人口学者・静岡県立大学学長 鬼頭宏先生「課題先進国である日本がこれから目指す社会とは?」)
土星の公転周期、約29.5という星のめぐりは、古代の人々にとってはとても長い時間であったと推察されます。
肉眼でも観察できる土星が、自分が生まれた時と同じ空の場所に戻ってくるというのは、それまでとは異なる時間の変化を意味し、そこから「凶星」としてのイメージが生まれたのかもしれません。
近年においても、日本人女性の平均寿命が50才を超えたのは、戦後になってからです。つい数十年前まで、土星が2回、自分の誕生時の位置に戻ってくることを見届けることのない時代だったのです。
天王星期から海王星、冥王星期へ
天空のカレンダー的には、土星期は2度目の土星回帰で終わり、天王星の時期へと移行します。
天王星という名前はギリシア神話の天空神ウラノスからつけられていて、伝説によるとウラノスは息子クロノスの反逆によって地位を追われ、その後クロノス(土星)が天空の神となったとされています。
初期の無秩序な状態から、秩序が生まれる。天王星と土星の関係は世代の交代を示唆しています。
2度目のサターンリターンは、徐々にそれまで担ってきた社会での役割を譲り、これまでとは異なる認知と意識の領域を探求する入り口となります。
それまでの社会を動かす中心的な役割から一歩距離を置き、自身の身体の変化を通じて、内面の変革や人知を超えたさらに広大な領域へと意識を傾ける時期が天王星期です。
土星までの、ある意味で物質的法則に縛られた意識領域から、人を超えた意識領域へと変容を遂げる時期と言えるでしょう。
天王星の公転周期は84年、近年の先進国での平均寿命とおおむね一致しています。
この84年の後、天王星の誕生時回帰を経て海王星の時期へと移行し、人の意識と無意識の境界は海王星の性質によって薄れ、本質的な高い精神性を伴って冥王星へと引き継がれていくことになります。
数十年後、あるいはもっと先にことになるのか、私たち人類の寿命はさらに伸びるのかもしれません。
その可能性を示唆するように、現在太陽系における「第9番惑星(プラネット・ナイン)」の存在がシミュレーションなどの結果をもとに提唱されています。
私たちの寿命がさらに伸びた頃には、9番惑星期という年齢期が加えられるのかもしれません。
サターンリターンの時期
サターンリターンについてネットで検索すると、占星術の厄年、とか、挫折するとか、ちょっと怖いようなキーワードが表示されて、正直ドキッとしました。
確かに、20歳代と30歳代では体調も変化し、社会的責任も増え、厄年と似たところがなくはないと思いますが、1回目を体験した後では、厄年というより新しい領域へのチャレンジという感覚かなと思います。
衝撃度合いからすると、冥王星の山羊座入りの方が規模も強さも大きかったですね。
サターンリターンは、成長の通過点なのですが、出たり入ったり進級したりのイベント続きの学生時代や入社式などと違って、儀式がありません。
なので、変化に対して事前に気持ちを切り替えたり意識して立ち向かえないために、遭遇する出来事に対して、出会い頭の事故的な印象で受け取られてしまうのではないでしょうか。
ホロスコープ上で誕生時の土星と経過中の土星が正確にコンジャンクションする前年に、それまで顧みられなかった内面の偏りが表面化するように思われます。
不釣り合いなこだわりや無意識に選択していた思考の癖など、成長を阻害する要素が表面に現れてきて、そのことでトラブルや混乱が起きやすいのかもしれません。
自分自身が一番混乱してしまって、落ち込んだり悩んだりすることも多い時期ですが、あくまでも成長のための通過点であり、小さくなってしまった靴が痛くて、つまづき、立ち止まっているだけです。
新しく自分にあった靴に履き替えて、少しずつなじませながら歩き出す。
1回目と2回目のサターンリターンとでは、入り口と出口という異なる場面となりますが、少しだけ長い視点から眺めてゆっくりと考えてみる、そういう時間を持つことで新たな方向性が見えてくる時期でもあると思います。
表1 2019年から2025年までの土星の位置と、誕生年の表です。 天空のカレンダー的には、誕生年1が土星期入り、誕生年2が天王星期への移行となります。 |
*表はクリックすると拡大します。
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